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労働基準監督署による最近の送検事例(労災関連)
◆東京労働局が送検事例を公表
東京労働局では、労働基準監督署が送検した事例をホームページ上で公表しています。ここでは、労災事故に関連した最近の送検事例を見てみましょう。
◆労災かくしで道路旅客運送業者を書類送検
平成24年2月、タクシー会社の駐車場で労働者がハイヤーを洗車していたところ、転倒して手首を骨折し、休業4日以上に及ぶ労災事故が発生しました。
労働安全衛生法では、「休業4日以上」を要する労災については、遅滞なく所轄労働基準監督署長に「労働者死傷病報告」を提出することを義務付けていますが、この会社は労災の発生を隠ぺいするため報告書を提出していませんでした。
中央労働基準監督署は、タクシー会社と営業所長を労働安全衛生法違反の容疑で、平成25年8月に東京地方検察庁に書類送検しました。
◆工事現場の墜落死亡災害で書類送検
平成24年4月、高架橋の防風柵新設工事現場で、建設工事業者の労働者(当時19歳)が、つり足場の組み立て
作業中に足場から約13メートル下の運河上に墜落して死亡しました。
労働者につり足場の組立て作業を行わせる場合は「足場の組立て等作業主任者技能講習」を修了した者の中から作業主任者を選任し、作業主任者に作業の進行状況および保護帽と安全帯の使用状況を監視させなくてはならないところ、この工事業者は、選任した作業主任者が当該現場に不在であり作業の進行状況と安全帯の使用状況を監視していないことを知りながら、被災労働者らに作業をさせていたことが判明しました。
亀戸労働基準監督署は、工事業者と工事部長を労働安全衛生法違反の疑いで、平成25年9月に東京地方検察庁に書類送検しました。
人事院調査結果にみる民間企業の勤務条件の最近の動向
◆調査の概要
人事院が、毎年民間企業に対して行う調査の2012年分の結果が、このほど公表されました。
(1)労働時間の短縮制度、(2)休暇の付与、(3)業務災害および通勤災害に対する法定外給付制度の状況
等について、常勤の従業員数50名以上の企業(6,852社)から回答を得ました。
◆「三六協定」により延長できる労働時間数
1カ月単位で三六協定を締結している企業において、協定により延長できる労働時間数は、「45時間」が49.6%、「30時間超45時間未満」が31.9%でした。また、1年間では「360時間」が53.7%、「300時間以上330時間未満」が26.5%でした。
特別条項付き三六協定を適用した場合の延長時間数については、1カ月間の延長時間数を「60時間超80時間以下」とする割合が46.7%、「45時間超60時間以下」が22.4%、「80時間超100時間以下」とする割合が18.2%でした。また、1年間の延長時間については、「720時間超」が33.2%、「660時間超720時間以下」が18.3%、「540時間超600時間以下」が13.2%でした。
◆休暇の付与の仕方
正社員の夏季休暇制度がある企業の割合は60.9%で、このうち58.4%の企業で有給としていました。夏季休暇制度がない企業の割合は38.9%でした。
なお、有期雇用従業員につ
いて見ると、フルタイムの
場合に正社員と同じ夏季休暇制度がある企業の割合は50.0%で、1週間当たりの労働時間数が正社員の4分の3以下の有期雇用従業員(以下、「4分の3以下の従業員」)では40.8%でした。
年次有給休暇では、フルタイムでは81.6%の企業が一定期間経過後から付与していましたが、4分の3以下の従業員では87.8%と、有期雇用従業員の間でも付与の仕方に違いが見られました。
◆業務災害および通勤災害に対する法定外給付制度
従業員が業務災害または通勤災害にあった場合に、労災保険による給付の他に独自給付を設けている企業の割合は、業務災害では、死亡で56.3%、後遺障害で50.0%、通勤災害では、死亡で51.3%、後遺障害で45.1%でした。
11月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
11日
○ 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
12月2日
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
「社会保険の適用拡大」に伴う企業と労働者の対応は?
◆調査の内容
社会保険の適用拡大が短時間労働者の雇用管理に及ぼす影響や、適用拡大が実施された場合の短時間労働者の対応の意向に関する調査の結果が公表されました。
この調査は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が、常用労働者5人以上の事業所(1万5,000社)に対するアンケート調査と、短時間労働者が多いとされる業種の企業および労働組合にインタビュー調査を行ったものです。
◆企業の意向は?
◎短時間労働者の雇用管理について見直す(と思う)企業が半数超
・「所定労働時間の長時間化を図る事業所」…約3割
「短時間労働者の人材を厳選し、一人ひとりにもっと長時間働いてもらい雇用数を抑制」するという企業が30.5%ありました。
・「所定労働時間の短時間化を図る事業所」…約3割
「適用拡大要件にできるだけ該当しないよう所定労働
時間を短くし、その分より多くの短時間労働者を雇用」するという企業が32.6%ありました。
◆従業員の意向は?
社会保険が適用拡大されたら働き方を「変えると思う」短時間労働者は約6割おり、具体的には、次のような意向が多くなっています(無回答:36.3%)。
・「適用されるよう、かつ手取り収入が増えるよう働く時間を増やす」…26.7%
・「適用されるよう働く時間を増やすが、手取り収入が減らない程度の時間増に抑える」…15.6%
・「適用にならないよう働く時間を減らす」…14.5%
・「正社員として働く」…8.7%
社会保険適用を希望しているが、会社から労働時間の短時間化を求められた場合の対応として、「他の会社を探す」「分からない・何とも言えない」「受け容れる」がそれぞれ約3割となっています。
◆短時間労働者の二極化
社会保険の適用拡大に伴い、「短時間労働者」という雇用形態では、“長時間化す
る層”と“短時間化する層”への二極化が進むと予測されます。また、基幹となる短時間労働者については、業務上の高度な役割を担う割合が高くなってくるでしょう。
その際、処遇や労働条件を適切に確保しなければ、貴重な人材の流出につながる可能性が高まります。
アルバイトの非行増加! 万が一に備えて就業規則をチェック
◆飲食店や小売店で被害が続出
コンビニのアルバイト店員がアイス用の冷凍庫の中に入っているところを写真に撮ってSNSに掲載した事件を皮切りに、最近、飲食店や小売店で類似の事件が相次いで起こっています。
中には事件をきっかけに閉店することとなった店舗もあることから、経営者がこの問題を軽く考えてアルバイトに対する教育や労務管理をおざなりにすることは、経営の存続をも危うくする大きなリスクをはらんでいると言うことができます。
◆被害を未然に防止するには?
こうした非行を未然に防止するためには、就業時間中は業務に集中することとして携帯電話(スマホ)の操作やSNS等へのアクセスを禁じたり、休憩時間中や就業時間外であっても勤務先の不利益につながるような行為は厳に慎むべきことを教育したりする必要があります。
さらに、これらのことを職場におけるルールとして徹底するとともに、就業規則や店舗に備付けの業務マニュアル等にも明記しておく必要があるでしょう。
◆万が一に備えて就業規則等を確認
就業規則は、労働基準法により常時10人以上の労働者を使用する使用者に作成が義務付けられているものですが、正社員用の就業規則だけでアルバイト用のものは作成されていなかったり、アルバイト用の就業規則はあるが規定内容に不備があったりするケースもあります。
また、使用する労働者数が10人未満であることを理由として、そもそも就業規則が作成されていないこともあります。
就業規則が作成されていない、または規定内容に不備があるという場合、万が一従業員に非行があってもそれ
を事由とする懲戒処分に付したり懲戒解雇にしたりすることができなくなるおそれがあります。
こうした問題を抱える会社では、自社の就業規則をチェックし、作成の仕方や見直しの要否等について検討してみると良いでしょう。