「マタハラ」の判断基準が明確に! 厚労省が公表したQ&A

2015-05-16

◆解釈通達における「契機について」とは?
厚生労働省は、マタハラに関する最高裁判決(2014年10月23日)を踏まえた解釈通達(2015年1月23日)に関して、3月30日に「妊娠・出産 妊娠・出産 ・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A」を公表しました。
このQ&Aには3つの項目があり、妊娠・出産・育休等の事由を「契機として」不利益的取扱いがなされた場合は違法となることに関して、この「契機」について焦点をあてたものです。

 

◆広島中央保健生活協同組合事件
この事件は、妊娠中の理学療法士が軽易な業務への転換を希望したところ、人事異動により降格とされ、育児休業後も元の役職に戻されなかったため、これが妊娠を理由とした不利益取扱いであり、男女雇用機会均等法に違反するとして勤務先の病院に対して管理職手当の支払いおよび損害賠償を求めた事案で、2014年10月23日に最高裁が広島高裁に差戻しを命じたものです。
この判決を受け、厚生労働省はいわゆる「マタハラ」を防止するため、今年1月23日に全国の労働局に通達(妊娠・出産、育児休業等を理由とする不利益取扱いに関する解釈通達)を発出し、企業に対する指導を厳格化するよう指示しました。

 

◆原則1年以内の不利益な取扱いは違法
Q&Aでは、原則として、妊娠・出産・育休等の終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合は「違法」と判断するとしています。
なお、1年を超えていても、人事異動、人事考課、雇止めについて、事由の終了後の最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされた場合も違法となります。

 

◆不利益取扱いに当たらない「例外」
不利益取扱いに当たらない例としては、例えば、(1)会社の業績悪化によりどうしても不利益取扱いをしなければならず、不利益取扱いの回避のための合理的な努力がなされた場合、(2)本人の能力不足等について事由の発生前から問題点を指摘・指導していた場合等が挙げられます。
また、有利な影響が不利な影響の内容を上回り、一般的な労働者が合意するような合理的な理由が客観的に存在する場合も例外と判断される可能性があります(労働者の同意、事業主の説明が必要)。
いずれにせよ、具体的な判断基準が示されたことで、事業主は今後さらに注意して対応する必要があります。