通常国会に提出された「労働基準法改正案」のポイント
◆ついに法案提出!
労働基準法等の一部を改正する法律案(労働基準法改正案)が、4月3日に通常国会に提出されました。法案の内容は企業の労務管理にとって非常に影響が大きいものであり、4月下旬に審議入りとなる見通しですが、今国会で成立するかは不透明な状況だとも言われています。
◆改正案のポイント
(1)中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置が廃止されます。
(2)著しい長時間労働に対する助言指導を強化するための規定の新設
時間外労働に係る助言指導にあたり、「労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない」旨が明確にされます。
(3)一定日数の年次有給休暇の確実な取得
会社は、10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととされます(労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はありません)。
(4)企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進
企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組みを促進するため、企業全体を通じて一の労働時間等設定改善企業委員会の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えることができることとされます。
(5)フレックスタイム制の見直し
フレックスタイム制の清算期間の上限が「1カ月」から「3カ月」に延長されます。
(6)企画業務型裁量労働制の見直し
企画業務型裁量労働制の対象業務に「課題解決型提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」が追加されるとともに、対象者の健康確保措置の充実や手続きの簡素化等の見直しが行われます。
(7)特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定が適用除外とされます。
また、制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、会社は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないことされます。
◆施行日は?
法案が成立した場合の施行期日は平成28年4月1日ですが、上記(1)については平成31年4月1日とされています。