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「改正高年法」施行目前! 定昇など賃金制度の動向
◆活発化する賃金をめぐる動き
平成25年の春闘がスタートし、ローソンが2013年度から20代後半~40代の社員の年収を平均3%(平均約15 万円)引き上げることを発表したり、先頃行われた政府と経済3団体トップとの会談で、安倍首相から、デフレ脱却に向けて業績が改善した企業から賃金を引き 上げるよう要請が出たり、賃金をめぐる動きが活発化しています。
◆約4割の企業では定期昇給を導入していない
公益財団法人日本生 産性本部が2012年10月~11月にかけて実施した「第13回日本的雇用・人事の変容に関する調査」によると、年齢や勤続年数に応じた定昇がある賃金 カーブの設計となっている企業は過半数(55.2%)を占めているものの、「定期昇給はない」という企業も約4割(39.6%)となったことがわかりまし た。
定昇制度の導入率を過去の調査と比較すると、2000年が87.3%、2004年が62.2%となっており、徐々に導入率は低下しています。
◆定昇を導入している企業の約半数が見直しを検討
定 昇制度がある企業での今後の定昇制度の取扱いについては、「現状のまま」が42.4%となった一方で、「定期昇給によって上がる水準を抑制したい」が 25.9%、「一定年齢までは定昇はやむを得ないが、もう少し早めの年齢で止めたい」が21.2%となり、合計で47.1%は見直しを考えていることがわ かりました。
企業規模が5,000人以上になると「現状のまま」という企業は12.5%まで減少し、「定期昇給によって上がる水準を抑制したい」 が37.5%、「一定年齢までは定昇はやむを得ないがもう少し早めの年齢で止めたい」が25.0%で、合計62.5%となり、さらにその傾向が強まってい ることがわかります。
◆年齢・勤続給を導入する企業は減少
基本給に採り入れられている賃金体系を見ると、管理職層では、役割や職責あ るいは職務の価値を反映させる「役割・職務給」の導入率が79.2%と高く、職務遂行能力の高さを反映させる「職能給」の導入率はついては、やや下がって 65.6%となっています。また、年齢や勤続年数を反映させる「年齢・勤続給」については、22.7%となっています。
非管理職層についても同様の傾向がみられますが、どちらに関しても言えることは、「年齢・勤続給」は、調査開始から下がり続けているということです。
4月からの「改正高年齢者雇用安定法」の施行による65歳までの雇用義務化に伴い、再雇用者の賃金の賃金水準を引き下げることを検討する企業が増えることも予想され、賃金をめぐる動きはますます目まぐるしくなりそうです。
3月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
11日
○源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
○労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>[労働基準監督署]
15日
○個人の青色申告承認申請書の提出<新規適用の物>[税務署]
○個人の道府県民税および市町村民税の申告[市区町村]
○個人事業税の申告[税務署]
○個人事業所税の申告[税務署]
○贈与税の申告期限<昨年度分>[税務署]
○所得税の確定申告期限[税務署]
○確定申告税額の延納の届出書の提出[税務署]
4月1日
○健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
「職場のパワハラ」の実態と予防・解決に向けた取組み
◆厚労省が初めて職場のパワハラに関する実態調査を実施
厚生労働省が委託事業(事業委託先:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社)により国として初めて「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」を実施し、その結果が公表されました。
この調査は、「企業調査」と「従業員調査」からなり、「企業調査」は従業員30人以上の企業4,580社から、「従業員調査」は企業・団体に勤務する20~64歳の男女9,000名からの回答(2012年7月~9月にアンケート調査実施)を基に取りまとめられたものです。
◆パワハラが発生している職場の特徴
企業調査における結果では、パワハラに関する相談がある職場に共通する特徴として、次の項目が挙げられています。
・上司と部下のコミュニケーションが少ない職場(51.1%)
・正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が一緒に働いている職場(21.9%)
・残業が多い/休みが取り難い職場(19.9%)
・失敗が許されない/失敗への許容度が低い職場(19.8%)
従業員調査においても、これと同様の傾向が示されています。
◆パワハラの予防・解決のための企業の取組み
パワハラの予防・解決に向けた取組みとして実施率が高かったのは、上位から「管理職向けの講演や研修」(取組み実施企業の64.0%)、「就業規則などの社内規定に盛り込む」(同57.1%)、「ポスター、リーフレット等啓発資料の配付、掲示」(同40.7%)でした。
これらの効果についてですが、「講演や研修」など直接従業員に働きかける取組みは効果の実感が高い一方で、「就業規則に盛り込む」といった事項では相対的に
低くなる傾向が見られます。
企業規模によっても対応可能な方法に違いが見られますが、パワハラ対策には、職場環境の改善、従業員の理解促進、社内規定の整備、研修実施など、複合的な取組みが必要になってくるものと思われます。
退職勧奨の注意点
◆「追い出し部屋」問題の帰趨は如何に?
社員から「追い出し部屋」などと呼ばれる部署の設置が相次いでいるとの報道が、一部でなされ、厚生労働省が実態調査に乗り出すことになりました。違法な退職強要につながるおそれがあり、企業からの聞き取りを中心に調査を行うようです。
調査の中身は、どの程度の数の企業で設置され、どんな仕事を命じているのかについて把握し、退職強要について注意を促すとのことです。
また、調査の際に「賃金未払い」や「解雇手続」に関する違反が見つかれば、併せて是正指導がなされるそうです。
◆「退職勧奨」と「退職強要」の違い
会社が、社員の自由意思による退職を勧めるのが「退職勧奨」であり、これ自体は、会社と社員間の労働契約について社員の自由意思による解約を会社から申し出るもので、法的な規制はありません。
しかし、あまりに執拗に行ったり、詐欺・脅迫などにより行ったりすれば、違法な「退職強要」とみなされてしまいます。実際に、そうした裁判例も多々あり、損害賠償のリスクや雇用契約の解消が無効とされるリスクがあります。
今回の追い出し部屋問題では、企業側としては「新たな技能を身につけたりして、他部署の応援や再配置の役に立つように」との意図からそうした部署を設置しているとしていますが、社員側は「社内失業者を退職に追い込むのが狙い」と反発しています。
◆退職勧奨実施時の注意点
退職勧奨は解雇規制の厳しい日本においてはよく用いられる方法ですが、実際に退職勧奨を行う場合は、前述のように裁判となるリスクがあります。
裁判とならないためには、退職勧奨の行い方に注意が必要です。退職勧奨の実施回数・場所・時間、社員に伝えるべき事項とその伝え方、退職届の受理方法、必要となる書類の作成などに注意して、適切に行わなければなりません。
もっとも、退職勧奨を行う以前に、問題のある社員に対する日頃の注意・指導や労務管理のあり方のほうが重要であり、仮に裁判等になった際にも会社の有利に働くものであることは知っておいていただきたいものです。
2月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
1日
○贈与税の申告受付開始<3月15日まで>[税務署]
10日
○源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
○労働保険一括有期事業開
始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>[労働基準監督署]
18日
○所得税の確定申告受付開始<3月15日まで>[税務署]
28日
○じん肺健康管理実施状況報告の提出[労働基準監督署]
○健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
○日雇健保印紙保険料受払報告書の提出[年金事務所]
○労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]
○外国人雇用状況報告(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>[公共職業安定所]