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今年度から「キャリアアップ助成金」が創設
◆有期契約労働者等のキャリアアップを促進
キャリアアップ助成金は、有期契約労働者等(有期契約労働者および正規雇用の労働者以外の無期契約労働者。短時間労働者、派遣労働者を含む)の企業内でのキャリアアップを支援する事業主を
対象として支給される助成金です。
実施は平成25年度の予算成立後となりますが、重点分野等(健康、環境、農林漁業等)の事業主が実施する人材育成についての助成のみ、前倒しで平成25年1月から実施されています。
◆事業主の業種・規模、対象労働者の年齢は制限なし
有期契約労働者等(年齢不問)の正規雇用への転換、人材育成、処遇改善など、事業主(業種不問、事業規模の制限なし)の行う施策ごとにコースが分かれています。
コースの概要は下記の通りですが、この他にも、対象労働者の状況や企業の行う施策によって助成額が加算・上乗せされる場合もありますので、十分な検討が必要です。
◆コースの内容
下記の助成額は中小企業のもので、( )内が大企業のものです。
【正規雇用・無期雇用転換コース】
…転換の内容により、1人当たり20万円(15万円)~40万円(30万円)
【人材育成コース】
…Off-JT(1人当たり):賃金助成1時間当たり800円(500円)、経費助成上限20万円(15万円)
…OJT(1人当たり):実施助成1時間当たり700円(700円)
【処遇改善コース】
…1人当たり1万円(7,500円)
【健康管理コース】
…1事業所当たり40万円(30万円)
【短時間正社員コース】
…1人当たり20万円(15万円)
【パート労働時間延長コース】
…1人当たり10万円(7.5万円)
◆「人材育成」「雇用管理」見直しのチャンス
計画的な人材育成は、企業の成長にとって不可欠です。この機会に助成金を活用し、人材育成・雇用管理の見直しに取り組んでみてはいかがでしょうか。
今年の「算定・月変」の実務上留意すべきこと
◆大臣が定める現物給与の価額の一部改正
社会保険の保険料は、被保険者の報酬月額および賞与
額に基づいて、労働保険の保険料は、労働者の賃金総額に
基づいて決定されますが、報酬、賞与または賃金(以下、「報酬等」という)の全部または一部が通貨以外のもので支払われる場合には、その現物給与の価額について、厚生労働大臣がその地方の時価によって定めることとされています。
従来、支店等に勤務する被保険者の現物給付について、本社所在地の価額が適用されていましたが、生活実態に即した価額が望ましいことから、2013年2月4日に平成25年厚生労働省告示第17号が発出され、4月1日以降、実際の勤務地の都道府県価額が適用されています(関連通達として同日発基労徴発0204第2号、保保発0204第1号、年管管発0204第1号「厚生労働大臣が定める現物給与の価額の取扱いについて」参照)。
この改正による現物給与額の変更は、固定的賃金の変更があったものとみなされますので、「月額変更届」の提出が必要となる場合があり、自社の算定・月変の手続きを行うにあたり注意を要します。
具体的な現物給与の額は、日本年金機構のリーフレットで「厚生労働大臣が定める現物給与の額」として、2013年4月1日現在のものが掲載されています。
6月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
3日
○ 労働保険の年度更新手続の開始<7月10日まで>[労働基準監督署]
10日
○ 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○ 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
○ 労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>
[労働基準監督署]
7月1日
○ 個人の道府県民税・市町村民税の納付<第1期分>[郵便局または銀行]
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
○ 健保・厚年の月額算定基礎届の提出期限<7月10日まで>[年金事務所または健保組合]
雇入時及び毎年1回
○ 健康診断個人票[事業場]
「健康保険被扶養者資格」の再確認について
◆健康保険の「被扶養者」とは?
協会けんぽホームページによれば、被扶養者の範囲は次の通りとされています。
1.被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、弟妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
2.被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の(1)~(3)の人
(1)被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
(2)被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
(3)(2)の配偶者が亡くなった後における父母および子
◆被扶養者認定の留意点
ところが、上記の要件を満たさない者を被扶養者とし
て申告してしまっていることにより、結果として本来保険給付を受けるべきでない人が保険給付を受けてしまい、被保険者の保険料負担増の一因となってしまっていることがあります。
具体的には、生計維持関係のない両親等を被扶養者に含めていたり、共働き夫婦の夫と妻の両方が子どもを被扶養者として申告していたりする等です。
中には、社会保険の被扶養者要件と税法上の被扶養者要件とが違っている点がわからずに誤った申告をしてしまっているケースもありますので、注意が必要です。
◆被扶養者資格の再確認の実施について
協会けんぽでは、5月末から7月末までの間、被扶養者資格の再確認を実施しており、今年度も5月末から順次、被扶養者のリストが事業主宛てに送られてきます。
再確認の対象となるのは、被扶養者のうち、「2013年4月1日において18歳未満の被扶養者」と「2013年4月1日以降に被扶養者認定を
受けた被扶養者」を除く人です。
リストが送られてきたら(1)該当被扶養者が現在も健康保険の被扶養者の条件を満たしているか確認のうえ、被扶養者状況リスト(2枚目は事業主控)に必要事項を記入し、事業主印を押し、(2)確認の結果、削除となる被扶養者については、同封の被扶養者調書兼異動届を記入し、該当被扶養者の被保険者証を添付し、
(3)(1)および(2)を同封の返信用封筒にて提出します。
すると、協会けんぽで確認のうえ年金事務所へ回送され、年金事務所で扶養者調書兼異動届の内容審査および削除処理が行われ、被扶養者(異動)届の「控」が事業主宛てに送られてくることとなります。
精神障害者の雇用義務付け法案を国会提出へ
◆法定雇用率の引上げに続き、新たな法律改正へ
企業に義務付けられてい
る障害者の法定雇用率(従業
員に占める障害者の割合)が、4月より、従来の「1.8%」から「2.0%」へ引き上げられました。また、障害者の雇用状況の報告が義務付けられる企業規模も、現行の労働者数「56人以上」から「50人以上」へ変更となりました。
そして、これに続き、「雇用の分野における障害者の差別の禁止」と「精神障害者の雇用義務付け」を主な内容とする法律案(障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案)が今国会で議論されることになりました。
◆雇用義務付けの実施時期
法案では、差別に関係する部分は平成28(2016)年4月から、精神障害者の雇用義務付けに関係する部分は平成30(2018)年4月から施行することとされています。
精神障害者の雇用が義務付けされると、この4月から上がった法定雇用率がさらに引き上げられることとなるでしょう。引上げ幅については、法律の施行から5年間は、実際の雇用状況等を勘案して緩和されたものになる可能性もあります。
なお、現在、精神障害者については、雇用義務はありませんが、雇用した場合は身体障害者・知的障害者を雇用したものとみなされます。
◆障害者雇用で業務改善
3年後や5年後というとまだまだ先のようにも感じられますが、社内の体制を変更するには十分な時間とも言い切れないと思います。
現在、障害者雇用率未達成の一定規模以上の企業は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて「障害者雇用納付金」(原則として、不足1人につき月額5万円)を納付しなければならないこととされています。現在、この制度の対象は、常時雇用する労働者が201人以上の企業ですが、平成27(2015)年4月からは「101人以上」の企業にまで拡大されることが決定しています。
障害者の雇用については、各種助成金や障害者派遣を行う企業なども利用して、導入に成功している事例が各種メディア等で取り上げられています。そうした企業では、導入時に業務全体を見直したために業績が向上した例もあるそうですので、自社で導入できるかどうか検討することも1つの参考になるかもしれません。