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「労働者派遣制度」見直しに関する最新動向
◆制度見直しの“3つの視点”
厚生労働省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」(以下、「研究会」)は、8月6日に開催された会合で報告書素案を公表し、今後、労働政策審議会で行われる見直しの議論のための方向性や論点を示しました。
この報告書素案では、これからの制度検討の基本的視点として、(1)派遣労働者の保護と雇用の安定、(2)派遣労働者のキャリアアップ推進、(3)労働者派遣制度を労使双方にとってわかりやすいものとすること、が挙げられています。
◆気になる「26業務」や「派遣期間」の行方は?
現行、正規社員の雇用を脅かすおそれがないとして、ソフトウェア開発や通訳、アナウンサーの業務等の26の業務(以下、「26業務」)については、派遣期間の上限が設けられていません。
これらについては、専門業務の枠組みをすべて廃止したうえで、期間に上限を設けるかどうかは派遣労働者と派遣元との間で締結される雇用契約によって変えられるようにし、有期雇用についてはすべての業務で派遣期間を「最長3年」とすることが適当とする案が示されました。
そして、派遣期間については、現在、派遣先の業務単位で制限が設けられており、同一業務での派遣の受入れは最長3年とされていますが、これを労働者個人ごとの期間制限とし、前任者の有無にかかわらず同じ部署で最長3年まで働けることとする案が示されました。
◆来年の通常国会に改正法案提出予定
今後は、公表された報告書素案をもとに2013年8月中に報告書を作成し、労働政策審議会で労働者派遣法の改正についての詳細を検討したうえで、2014年の通常国会に改正法案を提出することが予定されています。
派遣労働者を利用している事業所にとっては、労働者派遣制度をめぐる法規制が大きく変更される可能性がありますので、今後の動向に注目する必要があるでしょう。
厚労省が「ブラック企業」の取締りを強化へ
いよいよ「ブラック企業」の本格取締りがスタート
厚生労働省は、若年労働者等の使い捨てが疑われる企業(いわゆる「ブラック企業」)が社会問題となっていることを受けて、9月に集中的な監督指導を行うことを発表しました。
具体的には、以下の3つを柱として対策を行っていくとのことです。
◆(1)長時間労働抑制に向けた集中的な取組みの実施
9月を「過重労働重点監督月間」と定め、過重労働が行われている疑いのある約4,000事業所について、重点的に指導・監督を実施します。
主な重点確認事項については、時間外・休日労働が36協定の範囲内であるかの確認やサービス残業の有無についての確認があり、これらについて法違反が認められた場合は是正指導が行われます。また、長時間労働者に対しては、医師による面接指導などの健康確保措置が確実に講じられるよう指導も行っていくようです。
過労死等事案を起こした、または、脳・心臓疾患等に係る労災請求が行われたなどの企業等については、再発防止の取組を徹底させるため、法違反の是正確認後もフォローアップのための監督指導が実施されるようです。
監督指導の結果、法違反の是正が行われない場合は、是正が認められるまで、ハローワークにおける職業紹介の対象から外すことも決定しており、重大・悪質な違反が確認された企業については、送検、公表するとしています。
◆(2)しっかりとした相談対応
9月1日には、全国一斉の電話相談を実施し、過重労働が疑われる企業などに関す
る相談を踏まえ、法違反が疑われる企業に監督・指導を行います。9月2日以後も、「総合労働相談コーナー」、「労働基準関係情報メール窓口」で相談や情報を受け付けします。
新卒応援ハローワークでも、情報・相談を受け付け、労働基準法などの違反が疑われる企業に関しては労働基準監督署に情報を提供するとしています。
◆(3)職場のパワーハラスメントの予防・解決を推進
ポータルサイト「あかるい職場応援団」(http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/)を通じ、パワハラに関する裁判例を解説したり、パワハラ対策に取り組んでいる企業を紹介したりします。
また、パワハラ対策の必要性等をわかりやすく説明したポスター、リーフレット等を作成し、全国の行政機関等で掲示・配布するとのことです。
9月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
2日
○ 個人事業税の納付<第1期分>[郵便局または銀行]
○ 個人の道府県民税・市町村民税の納付<第2期分>[郵便局または銀行]
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
○ 外国人雇用状況報告(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>[公共職業安定所]
10日
○ 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○ 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
○ 労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>[労働基準監督署]
30日
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
2日
○ 個人事業税の納付<第1期分>[郵便局または銀行]
○ 個人の道府県民税・市町村民税の納付<第2期分>[郵便局または銀行]
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
○ 外国人雇用状況報告(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>[公共職業安定所]
10日
○ 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○ 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
○ 労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>[労働基準監督署]
30日
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
8月1日より変更される雇用保険の基本手当日額等
◆賃金日額・基本手当日額の変更
厚生労働省発表の「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減により毎年8月1日に見直される雇用保険の賃金日額の上限額・下限額が、2012年度の平均定期給与額が前年比で約0.5%減少したことから、いずれも若干の引下げとなりました。
これにより賃金日額に基づいて算定される基本手当日額の支給額も減額となる場合があり、対象となる方には2013年8月2日以降の認定日に返却される受給者資格者証に印字して通知されます。
なお、変更後の基本手当日額は、全年齢の下限額が1,848円です。上限額は、29歳以下は6,405円、30~44歳は7,115円、45~59歳は7,830円、60~64歳は6,723円です。
さらに、基本手当日額以外にも、今回の変更に伴い、下記の雇用保険給付について支給額等の変更が生じます。
◆就業促進手当の上限額の変更
就業促進手当(再就職手当、就業手当、常用就職支度手当)の上限額も変更となり、就業手当の1日当たり支給額(基本手当日額の30%)の上限額が、59歳以下で1,752円、60~64歳で1,418円となります。
◆高年齢雇用継続給付の支給限度額等の変更
高年齢雇用継続給付の支給限度額は34万1,542円となり、最低限度額は1,848円となります。支給対象月に支払われた賃金の額が支給限度額以上であるとき、また、高年齢雇用継続給付として算定された額が最低限度額を超えない場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。
なお、支給額算定に用いる60歳到達時等の賃金月額については、上限額が44万8,200円、下限額が6万9,300円となります。
◆育児休業給付の支給限度額の変更
初日が2013年8月1日以後である支給対象期間の育
児休業給付については、上限額が21万3,450円となります。
◆介護休業給付の支給限度額の変更
初日が2013年8月1日以後である支給対象期間の育児休業給付については、上限額が17万760円となります。
精神障害の労災認定件数が過去最多に!
◆脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況
厚生労働省が、平成24年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を発表しました。これは、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況についてまとめたものです。
くも膜下出血などの「脳血管疾患」や、心筋梗塞などの「心臓疾患」は、過重な仕事が原因で発症する場合があり、これにより死亡した場合は「過労死」とも呼ばれています。
◆精神障害の労災認定件数が過去最多に
今回注目すべきは、精神障害の労災申請自体は前年より若干少なくなりました(1,257件)が、労災認定件数が475件(前年度比150件増)となり、過去最多となったことです。
その内容を見ると、昨今、行政による是正指導でも多く指摘されている事項が並んでいます。
業種別では、製造業や卸・小売業、運輸業、医療・福祉といった業種が多くなっています。
◆仕事量・内容の変化、嫌がらせ・いじめに注意
次に、出来事別に支給決定件数をみると、(1)仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった、(2)(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた、(3)悲惨な事故や災害の体験、目撃をした、の順に多くなっています。
また、増加件数としては、(1)1カ月に80時間以上の時間外労働を行った(前年度比29件増)、(2)(重度の)病気やケガをした(同27件増)、(3)上司とのトラブルがあった(同19件増)、(4)セクシュアルハラスメ
ントを受けた(同18件増)、(5)(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた(同15件増)の順に多くなっています。
◆体調の管理と併せて労働時間の管理も
「1カ月に80時間以上の時間外労働を行った」という部分については、脳・心臓疾患の時間外労働時間数(1カ月平均)別支給決定件数をみても、飛躍的に発症件数が増えてくるところですので、会社の労働時間の管理が非常に重要であることがわかります。
時間外労働が多いと睡眠不足など体調の管理も難しくなり、こうした労災の発生につながってくることも考えられます。
暑い時期になり、熱中症が例年になく多く発生しているようです。今年は体調の管理と併せて、労働時間の管理についても見直してみてはいかがでしょうか。