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厚生年金未加入企業への指導が強化されます!
◆「加入逃れ」の防止
政府は、厚生年金保険の加入逃れを防ぐため、国税庁が持つ企業の納付情報から未加入企業を割り出し、指導を強化することを決めました。来春にも着手するとしています。
もし、加入指導されたにもかかわらず、これに応じない場合は、法的措置により強制的に加入となることもあるようです。
◆厚生年金の未加入問題とは?
厚生年金は、正社員や一定以上の労働時間(正社員の労働時間の概ね4分の3以上)があるパート従業員やアルバイトが強制加入となり、事業主は加入を義務付けられています。
しかし、従業員と折半となる保険料の負担を逃れようと届出をしない企業があり、問題となっているのです。
特に、パート・アルバイトを多く使用している企業の場合は、ルール通りに加入させると保険料負担が過大なものとなり、企業経営を圧迫するという事情があります。
ただ、企業が厚生年金に未加入の場合、従業員は保険料が全額自己負担の国民年金に加入するほかなく、厚生年金と比べ将来もらえる年金額も減ってしまいます。
◆これまでの調査と何が違うの?
“国税庁が保有するデータを使って、未加入企業を割り出す”ということです。
これまで、厚生労働省は法人登記されている約449万社の中から未加入企業の調査をすすめていましたが、中には倒産していたり、休眠状態だったりする例も多くあることから、特定作業はスムーズにいきませんでした。
しかし、国税庁が保有するデータは「税金を納めている=実際に企業活動をしている」ということになり、特定作業が容易になるのです。
8月の税務と労務の手続提出期限[提出先・納付先]
11日
雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
9月1日
○ 個人事業税の納付<第1期分>[郵便局または銀行]
○ 個人の道府県民税・市町村民税の納付<第2期分>[郵便局または銀行]
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
今年度の「是正指導・勧告」のポイントは?
◆前年度の申告事案の概要(東京都)
平成25年における東京労働局管内の労働基準監督署に対する申告(違反事実の通告)事案の概要が公表されました。
〔申告事案件数〕
申告受理件数は、過去10年で最少の5,051件まで減少(対前年比:▲592件、▲10.5%)しましたが、依然として労働基準法に定める最低労働基準の確保に問題が多く認められます。
〔申告内容〕
賃金不払と解雇が全体の多くを占め、賃金不払が4,210件(同:▲533件、▲11.2%)、解雇が830件(同:▲93件、▲10.1%)でした。
〔業種別件数〕
上位から、「商業」(1,232件)、「接客・娯楽業」(1,031件)、「その他の事業」(938件)でした。東京労働局では、今後の対応として、申告事案については、労働基準法等に違反するとして労働者が労働基準監督署に救済を求めているものであることから、引き続き申告・相談者が置かれた状況に配慮のうえ、迅速・的確に処理を行うとしています。
◆是正指導・勧告のポイントは?
このような状況を受け、東京労働局の平成26年度行政運営方針では、賃金不払や解雇等の申告事案について、優先的に監督指導等を実施するとしています。また、労働条件の確保として、有期契約労働については労働契約締結時の「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」の明示、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に基づく雇止めの予告等について厳しくチェックを行うようです。また、労働者派遣法の改正に伴い、派遣元・派遣先・職業紹介事業者等に対し、厳正な指導監督を実施するとしています。内容は「日雇派遣の原則禁止」や「マージン率等の情報提供の義務化」、「関係派遣先への派遣割合制限」等が中心のようです。自社の対応状況について、改めて確認をしておきましょう。
「非正規社員の正社員化」の動きと「限定正社員」
◆小売、流通、外食を中心に増加
先日、衣料専門チェーン「ユニクロ」を運営する株式会社ファーストリテイリングが、現在約3万人いるパート社員・アルバイト社員のうち、半数以上の約1万6,000人を今後2~3年かけて正社員に登用していくことを発表したとの報道がありました。同社以外にも、流通業や外食産業などにおいて、大手企業を中心に「正社員化」の動きが広がっているようです。
◆「正社員化」のねらい
この「正社員化」の広がりの背景には、以下のような企業の思惑があるようです。
・「経験豊富な非正規社員のノウハウを活用したい」
・「待遇改善によって優秀な人材を定着させたい」
・「景気回復の影響による人材不足状態を解消したい」
・「社員のやる気をアップさせて業務の質を高めたい」
◆「限定正社員」の活用
なお、ファーストリテイリングでは、勤務地限定(店舗限定)で働くことができ、雇用期間に定めのない「限定正社員」の仕組みを取り入れるとのことです。この「限定正社員」は、正社員と非正規社員の中間に位置する雇用形態であり、勤務地の限定のほか、職種・職種や労働時間などを限定するものもあり、最近では「多様な正社員」や「ジョブ型正社員」などとも呼ばれていま
す。
現在、「限定正社員」の仕組みを積極的に取り入れていこうとする政府・厚生労働省の動きがありますが、何らかの「限定」があることにより、通常の正社員よりも待遇(賃金水準)が低く設定されることが一般的です。
◆「限定正社員」に対する懸念
限定正社員には、育児や介護が必要なため「自宅の近くでしか働けない」「長時間は働けない」等、正社員として働くことに何らかの制約のある人に対して「正社員」の道を開くメリットがあるとされています。しかし、「賃金を低く抑えるための口実として使われる」「通常の正社員よりも解雇されやすい」などといった懸念の声も挙がっています。
メンタルヘルス支援会社の産業医紹介サービスが拡大中
◆ストレスチェックの義務化
先日、労働安全衛生法の改正案が成立し、医師、保健師などによるストレスチェックの実施が事業者に義務付けられることになりました(従業員50人未満の事業場については、当分の間努力義務)。
これにより、企業は社員が精神疾患を発症する前に対策をとることが求められます。
◆産業医の紹介サービス
こうした流れを受け、次のような企業のメンタルヘルス対策を支援するサービスが拡大中のようです。
・企業が求める診断能力を持つ産業医を紹介するサービス
・グローバル化に対応し、英語版のストレスチェックを提供するサービス
・独自のストレスチェックテストで問題があった場合に産業医を派遣するサービス
◆産業医との相性も大事
従来から50名以上の労働者を雇用している事業場は、産業医による毎月の訪問、労働者の健康管理指導の実施が必要ですし、月80時間超の残業をした労働者等がいる事業場(50名未満の事業場も含む)では、労働者の疲労の程度を把握し、本人の申出により医師の面談を実施する義務があります。これらに違反する場合は行政指導の対象となります(罰則もあり)。
多くの企業では、もちろん産業医の選任は行っているのでしょうが、近年のメンタルヘルス不全による職場の問題への対応が重要になってきた流れを受け、自社が求めるものと産業医との相性が合わないケースも増えてきたようです。