「第三次産業」における労災発生状況の特徴は?
◆第三次産業の労災発生状況
厚生労働省から、「第三次産業における労働災害発生状況の概要(平成26年)」が発表されました。この中から特徴的な傾向について取り上げます。
◆小売業
労働災害は平成21年より増加傾向にあり、平成26年は13,365件(前年比4%増)でした。
事故のパターンとしては、「転倒」が多く(34%)、次いで「動作の反動・無理な動作」(13%)となっており、これだけでほぼ半数を占めています。転倒災害の多くは9~11時台に発生しています。
また、経験年数3年未満の死傷者が全体の45%を占め、50歳以上の災害が約7割を占め、かつ年々増加傾向にあります。さらに、休業見込が1月以上の災害が約6割となっています。
◆社会福祉施設
労働災害が年々急増しており(6年間で1.5倍)、平成26年は7,224件(前年比8%増)となりました。小売業と同様、転倒災害が多く(31%)、9~11時台に発生しており、50歳以上の災害が約7割を占めています。
また、業種の特徴として、介護等に伴う「動作の反動・無理な動作」による災害が34%を占めています。特徴的な、「腰痛」の発生件数は年々増加しており、平成26年は1,023件(前年比3%増)となりました。
◆飲食店
平成26年は4,477件(前年比1%増)ですが、年々増加しています。ここでも「転倒」が28%を占め、続いて職種柄か「切れ・こすれ」(24%)、「高温・低温物との接触」(17%)が続いています。
また、30歳未満の死傷者数が全体の3分の1を占め、9~12時の作業になれていない時間と繁忙時間となる18~20時に発生しやすい傾向にあります。さらにここでも、転倒災害は9~11時台に多く発生し、50歳以上の災害が約6割を占めています。
◆高年齢労働者の災害防止が重要になる
近年、転倒による労働災害が急増している背景には、労働者の高年齢化があります。今回の発生状況を見ても、50歳以上の転倒によるものが目立っており、骨盤・大腿の骨折等により休業日数が長くなることが多いです。
第三次産業では、製造業等に比べると重篤な災害が少ないということから、現場の安全性に対して意識がおろそかになってしまう傾向にありますが、これから労働力人口の一層の高年齢化が見込まれる中、高年齢労働者の転倒災害の防止は一層重要な経営事項になるでしょう。