「裁量労働制」の採用増加と規制改革会議の動向
◆裁量労働制の協定届出数が過去最多
厚生労働省のまとめによると、「裁量労働制」の届出数が過去最多(2011年)となったそうです。届出数は年々増加しており、「専門業務型」は過去10年間で約3倍となり、「企画業務型」は適用要件が緩和された2004年以降は約2倍となったそうです。
◆「裁量労働制」とは?
裁量労働制は、業務の性質上、その遂行手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務として厚生労働省が定める、一部の業務について限定して適用できる制度です。
対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなします。労働時間だけでは成果を評価しにくい働き方に対応するために設けられた制度です。
裁 量労働制には、「専門業務型」と「企画業務型」の2種類があります。それぞれ対象となる業務が定められており、導入には労使での合意、労働基準監督署への 労使協定等の届出、就業規則等の整備など、慎重な検討が必要です。また、企画業務型の場合は、導入に必要な事項を協議する「労使委員会」の設置や定期的な 状況報告等が必要になります。
なお、一部に誤解があるようですが、裁量労働制を採用していても、働いたこととみなす時間(みなし労働時間)が法定労働時間を超えている部分については残業代が発生します。また、深夜勤務や休日勤務を行ったりすれば割増賃金が発生します。
◆メンタルヘルス不全誘発の一因にも
専門業務型裁量労働制は、特にSE(システムエンジニ ア)のような業務で最も多く導入されています。中には裁量労働制の持つ「仕事の手順や時間配分を労働者に任せる」という特徴を、企業に時間管理の特徴を、 企業に特徴を、企業に時間管理の責任がないというように誤解したうえ、本来対象とならないような労働者まで裁量労働としている例もあるようです。
その結果、長時間労働を助長し、うつ病の発症等のメンタルヘルス不全につながっているという指摘もあります。裁量労働制を導入していても労働者への健康配慮は会社の義務ですので、会社は出社・退社の時間などを管理しておく必要があるでしょう。
◆規制改革会議での議論
政 府の規制改革会議の議論では、企画業務型裁量労働制の適用拡大等についても取り上げられることになっています。いわゆる「ホワイトカラーエグゼンプショ ン」(一定以上の年収のホワイトカラーを労働基準法で定めた労働時間の規制から外す制度)が導入されることになるのかどうか、今後の動向に注目です。