最近の労働裁判から(飲酒運転で退職金不支給、能力不足で解雇)
◆飲酒運転による事故での退職金全額不支給は適法
京都市の中学校の元教頭(52歳)が2010年4月に自宅で飲酒した後に自家用車で外出し、さらに車内でも飲酒し、物損事故(車に追突)を起こしました。
その後、この元教頭は懲戒免職処分を受け、「退職金全額不支給処分」となりましたが、不支給処分の取消しを求めて訴訟を提起しました。一審(京都地裁)では、原告側が勝訴(全額不支給処分は取消し)となりました。
この訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は、原告側勝訴となった上記の一審判決を取り消し、元教頭の請求を棄却しました(平成24年8月24日判決)。
請求棄却の理由として、大阪高裁の裁判長は、「飲酒運転の内容は極めて悪質・危険であり、これに対する非難は大きく、公教育全体に対する信頼を失墜させた」とし、さらに「学校教育に貢献して勤務状況が良好だったことを考えたとしても、処分に裁量権の乱用があったとはいえない」と判断しました。
◆外資系企業における能力不足による解雇は無効
アメリカの金融・経済情報サービス会社に勤務する日本人男性(50歳)は、2005年11月に中途採用され、2009年12月以降、独自記事の執筆、同社の「業績改善プラン」への取組みなどを命じられました。
その後、記事本数の少なさ・記事の質の低さ(能力不足)を理由として、男性は2010年8月に解雇されましたが、「能力不足を理由として解雇されたのは不当である」と主張し、同社に対して「地位確認」および「賃金支払い」を求めて訴訟を提起しました。
この訴訟の判決において、東京地裁の裁判官は、解雇を無効とし、男性の請求を全面的に認めました(平成24年10月5日)。
裁判官は、「労働契約の継続を期待できないほどに重大だったとはいえず、会社が記者と問題意識を共有したうえで改善を図ったとも認められない」とし、「解雇理由に客観的な合理性はない」と判断しました。
男性側の弁護人によれば、外資系企業を中心に、無理な課題を設定する「業績改善プラン」の未達成を理由とした退職強要が相次いでおり、上記判決はこの手法による解雇を無効と判断した初めてのケースだそうです。
今後の他の外資系企業への影響が気になるところです。